【書籍紹介】不登校経験者でもある台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンさんの伝記物語

書籍紹介

35歳の若さで台湾の蔡英文(さい・えいぶん)政権に入閣し、IT担当大臣としての新型コロナウイルス禍の迅速な対応が日本でも大きな話題になったオードリー・タンさん。不登校経験者であるタンさんが歩んだ道のりを、児童文学作家の石崎洋司さんが書き下ろした伝記物語「『オードリー・タン』の誕生 だれも取り残さない台湾の天才IT相」が4月18日、講談社刊から発売されました。

「生きづらさ」を抱え、はじきだされる側だった過去

15歳で出版社を創業、18歳で渡米し、シリコンバレーで起業。33歳で経営の場から退き、IT企業の技術顧問やコンサルタントとして、さまざまなシステム構築やアプリ開発に関わった。顧問を務めた米アップルでは、音声アシスタント機能「Siri(シリ)」の開発プロジェクトにも携わったタンさん。33歳でビジネスから引退し、その後、台湾で最年少大臣になりました。

こうした経歴からみても勝ち組の代名詞ともいえる言葉が並ぶタンさんですが、実は生まれたときから、さまざまな意味での「生きづらさ」を抱え、はじきだされる側でした。

生まれてすぐに重い心臓病にかかり、泣くことや風邪をひくことすら命とりだった幼少期。小学校では高すぎる知能ゆえになじむことができず、いわゆる「浮きこぼれ」に。小学校3年生で不登校となり、世界に居場所などないと絶望の淵にたちます。

また、笑顔が絶えなかった家庭は不和となり、父はドイツへと去り、家族は崩壊の一歩手前だったそうです。

インターネットの世界との出会いで明るい光が

母の必死の努力や、さまざまな「恩師」、年上の才能あふれる友人たちの力、そして父との和解とドイツでの生活。おりしも勃興し始めたインターネットの世界との出会いによって、真っ暗に見えた前途に明るい光が射します。

ただ、中学ではエリート高校への進学が約束されていたものの、タンさんはここでさらに痛切な「生きづらさ」を感じていました。

  • 高まる周囲の期待と自分のやりたいことの不一致
  • 自らの身体と心の性の不一致
  • 「みんなのことをみんなで解決しよう」とするハッカー文化と、順位や勝ち負けを競うばかりの現実社会との不一致

そんなタンさんを救ったのは、台湾の先住民たちの多様性でした。「だれもが自分を曲げることなく、でもだれも困らせない、そんな道を、わたしたちはきっと見つけられる」。そう確信したタンさんは、中学校をやめ、自分らしく生きることを決意。その後、高校には進学せず独学で「天才プログラマー」と称されるまでの知識・技術を身に付けました。

タンさんの軌跡をたどることで後の自分の未来を切り開く後押しに

同書は、第一部「オードリーの生い立ち」と第二部「オードリーの仕事」の二部構成となっています。

唐宗漢(とう・そうかん)少年がどのようにして、世界に希望の火を灯す新しい民主主義の旗手「オードリー・タン」となっていくのか。その心の軌跡と仕事について、講談社の青い鳥文庫「黒魔女さんが通る!!」シリーズで知られる児童文学作家の石崎洋司さんがわかりやすく描いています。

「不登校が原点」と語るタンさんの軌跡をたどることで、今実際に悩んでいる子どもたちが、これからの自分の未来を切り開くために背中を後押ししてくれる一冊です。


書名:「オードリー・タン」の誕生 だれも取り残さない台湾の天才IT相
著者:石崎洋司
定価:1650円(税込み)
発売:2022年4月18日
講談社刊

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