先日、フリースクールを利用する不登校の小中学生を対象に、東京都が1人あたり年間最大24万円を支給する方針を固めたことが朝日新聞の取材で分かりました。
フリースクールを利用する不登校の小中学生を対象に、東京都が1人あたり年間最大24万円を支給する方針を固めたことが分かった。新年度予算案に関連経費3億円を計上し、都議会に提出する。不登校の子どもは増えており、フリースクールを利用する負担を軽くする狙いがある。
朝日新聞デジタル
そこで今回は、フリースクール費用の公的助成について、詳しく説明していきます。
公的助成の現状
文部科学省が10月27日に公表した2021年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、全国での小中学校の「不登校」と判断された児童・生徒数は24万4940人で、2020年度より4万8813人増えて過去最高となりました。不登校児童・生徒数の増加は9年連続で、今回の増加率は2020年度比24.9%増と過去最大に。20万人を超えたのも調査開始以降初めてです。
不登校児童・生徒数は年々増加傾向にあり、文部科学省をはじめ、多くの自治体で不登校の子どもたちに対する支援について議論される機会は増えてきました。
そうした中、「不登校の子どもたちの居場所」という役割を果たすフリースクールが注目を集めるも、利用を検討するうえで大きな課題とされていることがあります。
それが、費用の高さです。
フリースクールはいわゆる「一条校」と呼ばれる学校とは違い、あくまでも個人または団体が運営する教育施設で、扱いとしては塾などと同じで、授業料などが発生します。
なお、文部科学省が2015年8月5日に発表した「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」によると、会費(授業料)の月額は平均約3万3000円で、約4割の団体・施設が1万~3万円。入会金の平均額は約5万3000円で、約3割の団体・施設が1万~3万円としています。
こうしたフリースクールの費用に対する公的助成は乏しく、状況の改善に向けた議論も広がりを欠いているのが現状です。
東京都)授業料を1人あたり年間最大24万円補助
そうした中、大きく動き出したのが東京都です。
東京都は、フリースクールに通う子どもに関する実態調査を2022年度にスタートし、フリースクールの活動状況や利用者が求める支援を調べてきました。そして、その調査協力金として月1万円を保護者らに支給していて、これが実質的な授業料補助にもなっていました。
こうした実態調査を基に、フリースクールを利用する不登校の小中学生を対象に、1人あたり年間最大24万円を支給する方針を東京都は固めたとのことです。
新年度予算案に関連経費として3億円を計上し、都議会に提出するとみられます。
また、2023年度も実態調査を続け、協力金を月2万円にするほか、不登校の子どもに対する支援の先進例を調べるための費用などに5000万円を計上するようです。
滋賀県草津市)月ごとの授業料の上限4万円
滋賀県の草津市教育委員会は2021年4月から、草津市内在住の不登校の小中学生の保護者を対象にフリースクール費用の助成をスタートしています。
草津市教育委員会によりますと、2019年度の草津市内の不登校児童・生徒は小学校で1000人あたり13.2人、中学校で1000人あたり34.9人で、2017年度と比べて小学校で倍近く、中学校で6割増という結果です。こうした状況を受け、草津市は支援の強化に乗り出しました。
補助対象は、次の1から5のすべてに当てはまる保護者となっています。
- 申請のあった日の前1年以内に、おおむね30日以上在籍する学校に登校していない児童生徒の保護者
- 原則、認定施設に週1回以上通所する児童生徒の保護者
- 在籍学校に、認定施設での児童生徒の様子等に関する情報を提供することに承諾する保護者
- その他、対象経費の補助を別の団体等から受けていない保護者
- 市税の滞納がない保護者
補助対象経費は、月ごとの授業料の上限4万円を限度額とし、生活保護受給者は10分の10、就学援助の受給者は4分の3、それ以外の人は2分の1の割合で補助されます。
全国でも数少ないスクール独自の奨学制度
公的助成が少ない中、独自で補助に乗り出すフリースクールもあります。
認定NPO法人エデュケーションエーキューブが福岡県内で展開する「スタディプレイス」では、特別奨学制度として、ひとり親世帯で児童扶養手当の受給している世帯、生活保護世帯、住民税非課税世帯など経済的に厳しい世帯を対象に授業料の最大50%~70%を奨学金として授業料から免除しています。
こうした制度の導入は、全国のフリースクールの中でも珍しい取り組みです。
この制度を利用する保護者からは、「奨学制度がフリースクールでも利用できるというのは思っても見なかった」「母子家庭で経済的に厳しい環境の中で、奨学制度があることでフリースクールへ通う選択をし、一歩踏み出すことができた」といった声が上がっています。
まとめ
不登校で学校に行けない子どもたちの新たな居場所として、フリースクールという存在は重要です。
しかし費用がネックとなり、フリースクールへ通うという選択肢がなくなってしまうのは、子どもたちにとっての居場所が一つなくなってしまうのと同じです。
フリースクールという選択肢を生かすためにも、今回の東京都の取り組みをきっかけに、授業料などの費用に対する公的助成の状況改善に向けた議論が広がってほしいです。
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