近年子どもの課題として挙げられるネット・ゲーム依存。うちの子もそうかもしれない、、と不安に思う親御さんも多いと思います。そこで「子どもいばしょナビ」を運営する一般社団法人きのこは、「安城のフリースクールきのこ」開校記念イベントとして、ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i
の森山さんをお招きし、オンラインセミナーを開催しました。本記事はそのセミナーレポートをお届けします。
ネット・ゲーム依存とは?
ネット・ゲーム依存を理解する前に、依存症とはそもそも何でしょうか?依存症とは、「健康や生活に問題が生じていても、辞めたくても辞められない。時間や頻度をコントロールできないこと」を表しているそうです。いわゆる「意志の弱さ」や「怠け」とは違い、コントロールの障害である、という説明がありました。
例えばソムリエは仕事中にもアルコールを摂取していますが、ソムリエがアルコール依存症ではないかと考える人はあまりいないのではないでしょうか。プロゲーマーの場合も長時間ゲームを行なっているはずですが、一般的に依存症に陥っているとは考えられない、という例を提示していただきました。
ネット・ゲーム依存の診断基準では、必ずしも利用の時間だけで判断するわけではなく、ネットやゲームをやめたくてもやめられない、コントロールができない状態に陥っているかなど総合的にネット・ゲーム依存を判断するそうです。
ネットの過剰使用による問題は、いくつかあります。例えば、家族や友人との人間関係が希薄になったり、悪化したりすることがあります。また睡眠や食生活が乱れ、身体的にも運動不足に陥りやすいと考えられています。
最近の調査では、全国の中高生のうち93万人は、ネット・ゲーム依存状態を脱却するため、なんらかの専門的治療や支援が必要であるという報告もありますが、その中で実際に支援を受けられているのはごく一部のようです。また、そうした依存状態だとまでは言えなくても、ネットやゲームの使用に問題を抱えていて、進行予防する必要がある人も一定数いるそうです。
特に未成年者は前頭葉が未発達の状態にあり、依存が進むスピードは早いため、様子見をしているうちに症状が進行してしまうこともあるそうです。「いずれ飽きるだろう」と楽観視していると危険なケースもあるようです。
なぜ子どもはオンラインゲームにハマりすぎてしまうのでしょうか?オンラインゲームにハマるのは現実からの逃避行動の一つだそうです。オンラインゲームでは学校での人間関係などストレスがリセットされ、現実世界では得られない賞賛や注目を浴びることもできます。そうした居心地の良さが、ますますゲームの世界にのめり込むきっかけになるようです。
ゲーム依存が進行した結果、例えばゲームを暗示するものを見ただけで脳の報酬系が活発化し、ゲーム行動を駆り立ててしまったり、次第にこれまでのゲームで快感を感じにくくなって、さらに強い刺激があるゲームを求めたり、長時間の使用に繋がったりすることもあるそうです。
ネット・ゲーム依存予防で大切なことは?
ここまででネット・ゲーム依存がどんなものなのかは分かりました。そうした依存を予防するには、どうしたらいいのでしょうか?
それは、「子どもにあったルール」が予防の基本にあるそうです。ルールは守るためのルールなので、現実的に守れるものであることが重要です。一方的に親から押し付けるのではなく、子どもと一緒にルールを決めていくこと、それによって親子に納得感が生まれていることが大切だそうです。
ルールさえ決めたらそれで終わるわけではなく、効果的に守っていく必要があります。そのためには親子がネット・ゲームの使用時間のみに限らず、日頃からコミュニケーションをとる、お互いにルールを守るなど信頼関係を築くことが必要です。また勉強と遊び、睡眠と遊びを分けるために環境を整えたり、食事中や就寝時のデバイス利用に家族みんなで気をつけるなども効果的だそうです。
ゲーム依存では特有の悪循環が起こります。ゲームの楽しさがわからない、やめさせたいと考える親は、注意したり、叱ってデバイスを取り上げたりしてしまうことも多いと思いますが、そうすることで親は自分をわかってくれないと子どもが感じてしまい、嘘をつく、暴言・暴力に訴える、といったケースも多いそうです。そうならないためには、保護者がゲームやネットの世界を知ることも重要とのこと。
現代では遊びでも勉強でも同じような電子機器を使っていることも多く、子どもにとってゲームやネットは大変身近な存在です。ゲームの人気ジャンルは多岐に渡っていて、他にも動画、配信、SNSなど様々なサービスを駆使して子どもは遊んでいます。ゲーム実況やまとめサイトを見てみることで、子どもがどんな遊びにハマっているのかが分かり、コミュニケーションのきっかけにもなるそうです。
子どもの困った行動ばかりに注目し、焦りから叱責や罰を与えてしまうと、子どもが拒否感や怒りを抱き、関係が悪循環してしまうことがあるそうです。好ましい行動にできるだけ着目して褒めてあげることで、子どもの自己肯定感と親の自信に繋がり、好ましい行動が増える、好循環に入りやすくなります。実際に、親に認められていると感じられるような自己肯定感の高い子どもほど、親に気の乗らないことを頼まれても、協力的に応じる傾向があるそうです。
家族の信頼関係を改善し、子どもにとって居心地の良い空間を作ることで、ルールを守ったり、ネット・ゲームへの逃避を必要としない状態を目指すことが、根本的なネット・ゲーム依存の予防に繋がる。家庭内でお子さんの好ましい行動を少しでも増やすようにしていきましょう、というメッセージで、セミナーは終了しました。
ネットやゲームへの依存予防では、家庭内の人間関係を良くすることが最も重要だという、大変参考になるお話をいただきました。安城のフリースクールきのこでも、ゲームやネットなどを一概に禁止するということではなく、子どもにとって居心地の良い空間作りを目指したいと思いました。
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