高校って卒業する意味があるの?

進学

「高校はちゃんと卒業した方がいい」という言葉をよく聞きませんか?

もはや「義務教育」と化している高校教育。内閣府男女共同参画局が作成した「男女共同参画白書 令和3年版」によると、高等学校などへの進学率は女子が95.7%、男子が95.3%といずれも高い水準となっており、今の社会では高校まで行くのが当たり前といえます。

しかし、なぜ義務教育じゃないのにほとんどの人が中学を卒業したら高校進学を選ぶのでしょうか。そして、必ずしも高校へ進学したら卒業しなければならないのでしょうか。

そこで今回は、高校に行く理由や意味などを解説していきます。

進学するのが一般的なのはなぜ

学校教育法第50条によると、高校は「中学校における教育の基礎の上に、心身の発達および進路に応じて高度な普通教育、専門教育を施すことが目的」とされています。中学を卒業後、さらに学びたいと思ったり、大学に進学する、就職するなどの目的で高度な普通教育や、専門教育を受けたりするために通うことが多いはずです。

中学とは違い、高校へ通うのは自由意思なので、中退をする人もいれば、成績不良や出席日数が足りなくて留年することもあります。

では、なぜ高校へ進学するのが一般的なのでしょうか。

理由の一つとして考えられるのは、学歴による差別意識がいまだにあるからです。今の社会で求められる知識や能力のレベルが技術の進歩によって格段に上がっており、中学卒業程度では不十分で、もう少しレベルの高い学力のある人間が求められるようになっています。

また、厚生労働省が平成30年に発表した「若年者雇用実態調査」の結果によると、若年労働者を100とした際の正社員の割合は中卒が35.4%、高卒が56.3%、大卒が80.9%となっています。一方で正社員になれなかった若年労働者の割合は中卒で64.6%、高卒で43.7%、大卒で19.1%となっており、学歴が高くなるほど、「正社員」の割合が高くなっています。

こうしたデータからもわかるように、学歴が上がるにつれて正社員の割合も上がり高収入が見込まれるため、「中卒より高卒のほうが良い」と考える人が多いのが現状です。

一方、就職への採用面においても、就職先や職種の選択肢が少なかったり、仕事の給与条件が厳しかったりもします。「学歴フィルター」という言葉があるように、企業は採用の効率化を図るために履歴書の学歴だけで判断してしまうケースもあります。

昨今、「学歴は関係ない」という考えも広まりつつありますが、まだまだ学歴による差別意識があるのが事実で、高校進学を選ぶことが多いといえます。

周りのみんなが進学するから

そのほかの理由として考えられるのは「周りのみんなが進学するから」です。

中学生の時期に将来の進路が明確に決まっている人はほとんどいないはずです。にもかかわらず、自由意思でもあるため高校へ進学するのか、就職するのかなどを自分の意志で決めなければなりません。

将来の進路決定は大きな悩みにもなりますし、心理的な負担も大きいです。

そうした中で、「周りのみんなが進学するから」という理由を選べば、心理的な負担も少しは和らぎます。

コンサルティング事業などを行う株式会社STAIRZが2022年3月に発表した、現役の高校生に対して行ったWEBリサーチの結果によると、「高校に行かない人が同世代の半数いる場合、あなたは高校に行きますか?」という質問に対し、全体の9.4%が「いいえ」と答えています。

進学するのが一般的な今、もし高校に行かないという選択肢が普通であれば、9.4%が高校に行っていないということになります。

このように、「周りのみんなが進学するから」という理由で高校進学を選ぶケースも少なくありません。

高校で学べることとは

「戦国大名や因数分解なんて将来絶対に使わない」

勉強をしていて、こう思ったことはありませんか?
高校へ通う上で勉強は避けて通れません。しかし、将来使わないであろう内容をなぜ勉強しなければならないのかという疑問を持つ人も多いはずです。

難しい言葉になりますが、教育学の中で「形式陶冶」と「実質陶冶」という考え方があります。

先ほどの因数分解を例にすると、「因数分解を解くための公式を覚える」というのが形式陶冶、「因数分解の解き方から、筋道を立てて考えることの大切さを学ぶ」が実質陶冶となります。

戦国大名でいえば、「戦国大名の名前や年号を覚える」と「戦国大名の生き方や考え方に触れ、自分との共通点や違いを理解し、自分の生き方や考え方の参考にする」という風になります。
学校のテストや高校・大学の入試では、数学の公式や国語の文法、英単語など形式陶冶の部分が必要となりますが、実際生きていく上では実質陶冶の部分が必要となります。

このように、同じ「勉強をする」でも二つの側面を持ち合わせており、「戦国大名や因数分解なんて将来絶対に使わない」とは必ずしも言い切れないです。

また、勉強以外でも、授業や課外活動、文化祭などのイベントなどを通じて集団行動を学んだり、日常の学校生活などを通じてのコミュニケーションを学んだりします。

高校生で不登校になってしまったら

2022年10月に発表された文部科学省の「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、高校における不登校の人数は5万985人で、在籍生徒数に対する割合は1.7%でした。この数値は、高校生のおよそ60人に1人が不登校になっていることになります。

ただ、この不登校の人数には年間欠席が29日以下の生徒や発達障がいの特性で学校が苦手な生徒、高校をすでに中退した場合などは不登校に含まれていないので、実際にはこの数字よりも多いのではといわれています。

不登校の生徒やその親御さんが気になるのは、その後の進路だと思います。

高校卒業の学歴は得たい、大学へ行きたい、いい会社へ就職したいなど、自分が興味のあることや進学についてなどをもう一度整理する必要があります。

また、いま通っている高校を必ずしも卒業しなければならないということはありません。通信制高校への転校をはじめ、通信制サポート校やフリースクールに通いながら高卒認定試験を受験するなど、選択肢ほほかにもあります。

なお、本サイト「子どもいばしょナビ」を運営する「安城のフリースクールきのこ」も、個別指導塾教室長・キャリアコンサルタント資格保持者が運営する施設で、学習指導・進路指導には特に力を入れています。

通信制高校は入学者数や学校数が増加傾向に

高校進学率は非常に高い水準にあるにもかかわらず、少子化の影響もあり高校入学者は毎年減少し、学校数も減少傾向にあります。

生徒数全体でみても、文部科学省が発表した令和3年5月時点での高校の生徒数は299万8930人。令和2年度の統計が301万2708人、令和元年度の統計が315万9016人なので、減少していることがわかります。

しかし、同じ高校でも「全日制」「定時制」「通信制」の3つの課程に区分されますが、通信制に関して言えば、入学者数も学校数も右肩上がりとなっています。

文部科学省が2020年8月に発表した学校基本調査(速報値)によると、5月1日時点で通信制高校に在籍する生徒数が20万6994人で、1948年に調査を始めて以降で初めて20万人を超えました。

翌2021年に発表した同調査(速報値)では、通信制高校に在籍する生徒数は21万8428人となり、3年連続で過去最高を更新し、通信制高校の生徒数も6年連続で増加となりました。

これは、高校生15人に1人が通信制高校に在籍している計算となります。

また、学校数は2021年度時点で260校(公立校77校、私立校183校)。公立高校が1校減少したものの、私立高校が4校新設されました。

高い水準を維持する高校進学率の中でも、通信制高校に対するニーズは高まりつつあるといえます。

まとめ

高校を卒業することに意味があるのかについて、経験や知識、就職の面で可能性を広げるためにも進学・卒業する意味はあるといえます。

ただし、中卒でも働ける仕事もありますので、必ずしも高校へ行かないとダメということではありません。

海外に目を向ければ、IT担当大臣としての新型コロナウイルス禍の迅速な対応が日本でも話題になった台湾のオードリー・タンさんも、不登校を経験し中学を中退、その後15歳で起業しアメリカのアップルで顧問を務め、史上最年少で台湾の閣僚に就いたという成功事例もあります。

また日本の社会も、これまでの実績や出身大学を重視する「学歴社会」に対し、いかに学ぶことができるのかを重視する「学力社会」へ変わりつつあるともいわれています。

ですので、本当に意味があるのは「高校卒業」という学歴・資格を得るためだけに通うのではなく、自分なりの目的意識を持って高校へ通うことであって、そうした目的意識を持って学ぶ力がこれからの社会においても必要となってきます。

以上、この記事が高校へ進学するか悩んでいたり、高校を中退したあとどうすればいいか悩んでいたりしたときの参考にしてもらえたらうれしいです。

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