文部科学省が10月27日に公表した2021年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、病気や経済的理由などとは異なる要因で30日以上登校せず「不登校」と判断された児童・生徒数が愛知県内の公立小中学校で1万6959人に上り、1991年度の調査開始以降最多となりました。都道府県別で見ても、東京都、大阪府、神奈川県に次ぐ4番目の多さです。
順位 | 都道府県 | 不登校児童・生徒数 |
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1位 | 東京都 | 2万3261人 |
2位 | 大阪府 | 1万8109人 |
3位 | 神奈川県 | 1万7253人 |
4位 | 愛知県 | 1万6959人 |
5位 | 福岡県 | 1万2299人 |
今回は文部科学省の公表データを基に、愛知県内の不登校児童・生徒数について整理していきます。
全国の不登校は24万4940人
全国での小中学校の「不登校」と判断された児童・生徒数は24万4940人で、2020年度より4万8813人増えて過去最高となりました。不登校児童・生徒数の増加は9年連続で、今回の増加率は2020年度比24.9%増と過去最大に。20万人を超えたのも調査開始以降初めてです。
調査年度 | 全国の不登校児童・生徒数 | 増加率 |
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2021年度 | 24万4940人 | 24.9% |
2020年度 | 19万6127人 | 8.2% |
2019年度 | 18万1272人 | 10.2% |
2018年度 | 16万4528人 | 14.2% |
2017年度 | 14万4031人 | 7.7% |
2016年度 | 13万3683人 | 6.1% |
2015年度 | 12万5991人 | 2.5% |
2014年度 | 12万2897人 | 2.7% |
2013年度 | 11万9617人 | 6.1% |
2012年度 | 11万2689人 | ▲4.0% |
愛知県内の小中学校も9年連続の増加
愛知県内における不登校児童・生徒数は1万6959人で、全国と同様9年連続の増加となりました。また、小学生では5607人(2020年度比28.4%増)、中学生では1万1352人(同27.5%増)という結果となり、1クラス40人と仮定した場合、小学校では1クラス0.552人(1人いるかいないか)、中学校では2.168人(約2人)が不登校という計算になります。
県内全体の在籍児童・生徒数 | うち県内の不登校者数 | 不登校者数の割合 |
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61万5634人 | 1万6959人 | 2.75% |
県内の小学校児童数 | うち県内の不登校児童数 | 不登校児童数の割合 |
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40万6132人 | 5607人 | 1.38% |
県内の中学校生徒数 | うち県内の不登校生徒数 | 不登校生徒数の割合 |
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20万9502人 | 1万1352人 | 5.42% |
また2011年度の調査では、愛知県内の不登校児童・生徒数は8019人、うち小学生では1787人、中学校では6232人だったので、この10年で愛知県内全体では2倍、小学生で3倍、中学校は2倍増加したという計算になります。
コロナ禍の休校など影響か
文部科学省は、今回全国的に大幅に増加した背景として、新型コロナウイルス禍の活動制限で登校意欲が低下しやすかったことや、臨時休校・再開が繰り返されたことで、登校のハードルが下がったり、生活リズムが乱れたりするケースがあったことなどを指摘しています。
実際に、「新型コロナウイルスの感染回避」による全国の長期欠席者数は小中学校で59316人。初集計だった昨年の20905人より約3倍増えています。愛知県内においても、「新型コロナウイルスの感染回避」による長期欠席者数は小中学校で2565人。昨年の1268人より2倍近くになっています。
また、2021年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」における「不登校の要因」では、「無気力、不安」が最も多く49.7%で、次いで「生活リズムの乱れ、あそび、非行」が13.1%という結果となり、学校や家庭ではなく本人に関わる状況に対しての回答が6割以上でした。
このように、新型コロナウイルス禍で生活リズムが乱れやすいことなどから子どもたちが抱える不安が増大し、学校へ登校する意欲が湧きにくくなったことなどが原因として考えられます。
不登校に対する社会認識の変化も一つに
多様性が求められる現代において、人生のあり方や学歴などに対する価値観にも少しずつ変化がみられるようになってきています。「高校へ進学するのが一般的」「みんなが大学に行っている」など、学歴に対する根強い考え方はまだまだあるものの、そこに対して「どうして」と疑問を抱く子どもが増えているのも実情です。
また、不登校になった児童・生徒に対する支援の在り方に変化も出てきています。適応指導教室だけでなく、本サイト「子どもいばしょナビ」を運営する「安城のフリースクールきのこ」をはじめ、フリースクールも全国に広がりを見せています。
さらに愛知県岡崎市では、校内フリースクール「F組」という独自の取り組みを展開しており、子どもたちの社会的自立を目指し、一人一人に寄り添った支援を行っており、中学校内における新たな不登校支援として期待されています。
このように、多様化による価値観や考え方の変化や、不登校児童・生徒に対する社会認識が変わってきたことも要因と考えられます。
高校の不登校生徒数は横ばい傾向続く
全国での小中学校の「不登校」が増加傾向にある一方、高校では違った傾向が見られます。
2021年度の不登校生徒数は全国で5万985人で、昨年の4万3051人から18.43%増加しました。ただ、過去10年でみるとほぼ横ばいで推移していいます。
調査年度 | 全国の不登校生徒数 | 増加比 |
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2021年 | 5万985人 | 18.43% |
2020年 | 4万3051人 | ▲14.07% |
2019年 | 5万100人 | ▲4.98% |
2018年 | 5万2723人 | 6.20% |
2017年 | 4万9643人 | 2.22% |
2016年 | 4万8565人 | ▲2.01% |
2015年 | 4万9563人 | ▲6.76% |
2014年 | 5万3156人 | ▲4.49% |
2013年 | 5万5655人 | ▲3.48% |
2012年 | 5万7664人 | 2.31% |
高校は義務教育ではないため、一定期間不登校が続くと退学になったり通信制高校への転学を選ぶケースもあるため、今回のデータでは動向がわからない側面があります。また、通信制高校は集計対象になっていません。
ただ、定時制や通信制の県立高校への志願者が年々増加しています。愛知県においても、志願者が増加傾向の昼間定時制ですが、通信制課程を設置する高校においても、募集人数を超える生徒を受け入れるなど志願者が増加しています。
そうした中、愛知県教育委員会では現在、「昼間定時制課程」の設置など圏内の公立高校における定時制と通信制の高校の再編に向けて具体的な検討を進めています。
まとめ
全国の不登校児童・生徒数は小中学校だけでなく、数字には見えづらい高校も含め今後も増加していくと予想されます。そうした中、子どもたちが未来に向けて自信をもって進んでいけるよう、行政も民間もさらなる変化が求められます。
愛知県内においても、「安城のフリースクールきのこ」などフリースクールの開設は広がっており、また、「F組」や「昼間定時制課程」の設置といった行政による取り組みも行われており、注目が集まっています。
また、一つ言えることは、「不登校=悪」ではないということです。
こうした取り組みが広がることで「不登校」という言葉がなくなり、子どもたちにとってさまざまな「選択肢」があり、それを受け入れる社会になっていってほしいものです。
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