全国で「子ども第三の居場所」づくりを進めている公益財団法人日本財団(東京都港区・笹川陽平会長)は11月17日、子どもが家庭や学校以外で安心して過ごせる「第三の居場所」の安定的な運用のため、ガイドライン策定と予算措置について取りまとめた「政策提言書」をつくり、小倉將信内閣府特命大臣(少子化対策、男女共同参画)へ手渡しました。
今回は、日本財団がどういった内容を提言したのかなどを整理していきます。
日本財団が分析する「第三の居場所」の現状
同団体は公営競技の一つである競艇(ボートレース)の収益金を基に、海洋船舶関連事業の支援や公益・福祉事業、国際協力事業を主に行っている公益財団法人で、社会課題の解決を目指す「ソーシャルイノベーション」のハブ(中核)となり、子ども支援、障害者支援、災害復興支援など、よりよい社会づくりを目指しています
2016年から第三の居場所にて放課後の居場所や食事、学習・生活習慣の定着、体験の機会を提供していて、拠点数は2022年11月17日時点で39都道府県136カ所になります。
その第三の居場所を利用した約2500人の子どもたちを支援していく中で、子どものための居場所が各地域で求められる一方、自治体によって取り組み内容に差があることや、国としての予算措置も十分ではないことが分かったといいます。
同団体の調査によると、経済的・家庭的など何らかの困難に直面する子どもの割合が34.3%。また、行政・民間を含め「小学生」に対する支援事業がまだまだ手薄で、同団体の第三の居場所の利用者のうち、過去に公的な学習支援・生活支援を受けたことがある割合は5~6%程度に留まっているとのことです。
2023年4月の「子ども家庭庁」発足を見据えて
今回の提言は、2023年4月に「子ども家庭庁」が発足することを見据え、第三の居場所が全国に広がるようにという思いから実施されました。
こども家庭庁とは、岸田文雄内閣により2022年2月25日に法案が国会に提出され、6月15日に成立、6月22日に公布された「こども家庭庁設置法」により、内閣府の外局として2023年4月1日設置予定の行政機関です。
これまで文部科学省や厚生労働省、内閣府、警察庁などが所管していた子どもを取り巻く行政事務を集約することを目的としており、虐待やいじめ、それに子どもの貧困などに幅広く対応するため、子どもの安全で安心な生活環境の整備に関する政策を推進するとしています。
提言内容は大きく二つ
今回提言された内容は、「ガイドラインの策定」と「予算事業への見直し」の大きく分けて二つ。
ガイドラインの策定については、同団体が居場所支援に重要だと考える五つの理念「安心・食事・生活習慣・学習・体験」の機会の提供を、各自治体が運営する居場所において均一なクオリティーを担保できるよう、ガイドラインの策定を促しました。
また、予算事業への見直しについてですが、自治体の財政状況や、自治体の首長・教育長の交代などにかかわわらず、支援につながった子どもたちとの関係性を太く長くするためにも、人件費や扶助費などと同じ「義務的経費」にすることが必要としています。
そのほか、提言書の詳細については、同団体がまとめた「子どもの居場所の全国展開に向けた提言書 ―困難に直面する子ども自身が安心して過ごせる場が切れ目なく続くために―」で確認することができます。
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2022/04/wha_pro_chi_27.pdf#
今回の提言を受け、小倉内閣府特命担当大臣は「現在、こども家庭庁の設立を待つことなく、こどもの居場所づくりに関する検討を行っているが、日本財団が取りまとめた提言書や調査報告書の内容も参考にし、検討を進めていきたい」とコメントしています。
本サイト「子どもいばしょナビ」を運営する「安城のフリースクールきのこ」をはじめ、民間主導の子どもの居場所づくりが全国に広がりを見せているからこそ、こうして動きつつある国や各自治体の動きにも注目が集まります。
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