不登校でも出席に? ICT教材を使って勉強し、出席扱いになる制度

学習

「出席扱い」と呼ばれる制度をご存じでしょうか?

文部科学省は2005年、不登校生がインターネットなどを活用して自宅学習をしたり、学校外で指導を受けたりした場合、一定の要件を満たせば校長の判断で出席扱いにする通知を発出し、2019年10月には改めてオンライン学習を出席扱いと認めるよう通知しています。

ただ、この制度はまだまだ認知が進んでいない現状があります。

そこで今回は、「出席扱い」制度の利用方法や要件などを詳しく解説します。

「出席扱い」制度とは

同制度は、小・中学生を対象に学校復帰の円滑化を目的に運用されている制度で、不登校であっても、学校に復帰するための準備として、自宅学習や学校外での施設において適切な学習を行い、個別指導等の適切な支援を受けている場合に、校長が指導要録上「出席扱い」とすることができるというものです。

文科省が2019年10月に通知した「不登校児童生徒への支援の在り方について」では、以下のように書かれています。

不登校児童生徒が学校外の施設において相談・指導を受けるとき、下記の要件を満たすとともに、当該施設における相談・指導が不登校児童生徒の社会的な自立を目指すものであり、かつ、不登校児童生徒が現在において登校を希望しているか否かにかかわらず、不登校児童生徒が自ら登校を希望した際に、円滑な学校復帰が可能となるよう個別指導等の適切な支援を実施していると評価できる場合、校長は指導要録上出席扱いとすることができる。

文部科学省「(別記1)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」

2022年10月に発表された文部科学省の「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、不登校児童生徒のうち、自宅におけるICTなどを活用した学習活動を指導要録上出席扱いなった児童・生徒数は、小学校で4752人、中学校で6789人でした。これは不登校児童・生徒数に対し、小学校で5.8%、中学校で約4.2%が制度適用を受けた計算になります。

「出席扱い」の要件

文科省の通知では、適応指導教室といった学校外の公的機関や、本サイト「子どもいばしょナビ」を運営する「安城のフリースクールきのこ」などのフリースクールといった民間施設において相談・指導を受けている場合と、自宅でICTなどを活用した学習活動を行った場合で、それぞれ要件があります。

学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の要件

  • 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
  • 民間施設における相談・指導が適切であるかどうかは、「民間施設についてのガイドライン」を参考に、校長が教育委員会と連携して判断すること
  • 当該施設に通所または入所して相談・指導を受けること
  • 学習成果を評価に反映する場合には、当該施設における学習内容などが学校の教育課程に照らし適切であると判断できること

自宅においてICTなどを活用した学習活動を行った場合の要件

  • 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
  • ICTや郵送、FAXなどを活用して提供される学習活動であること
  • 訪問などによる対面指導が適切に行われること
  • 当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的なプログラムであること
  • 校長は、対面指導や学習活動の状況などを十分把握すること
  • 学習成果を評価に反映する場合には、学習内容などがその学校の教育課程に照らし適切であると判断できること

2005年の通知では、学習活動が学校復帰に向けての取り組みであることを前提としていましたが、2019年の通知では復学前提でなくても「出席扱い」とし、成果を評価に反映できるようになりました。

また、上記の要件は自治体や学校によって求められる内容が多少変わることがありますが、どちらにも共通して言えるのは、保護者と学校との間に十分な連携・協力関係を保つ必要があるということです。

保護者が子どもの気持ちをくみ取り、担任や校長と積極的にコミュニケーションを図れるかがカギとなります。

出席・学習評価のガイドライン

株式会社クラスジャパン学園(東京都渋谷区・中島武代表取締役)は経済産業省「未来の教室」実証事業として、不登校の小・中学生がICTを活用して自宅で学習を行なった際に、在籍校で出席扱いとし、学習評価に反映するための考え方を提示するガイドラインを静岡県浜松市や三重県四日市市など全国17自治体と連携して作成し、全国1526カ所の都道府県および市町村の教育委員会に送付しました。

「未来の教室」とは、未来を見通しにくい時代を生きる子どもたち一人一人が、未来を創る当事者に育っていく学習環境を構築するために、経産省とEdTech研究会が提言した未来の教室が目指す姿です。

経産省は2018年度より提案を公募し、この「未来の教室」実現に向けて実証事業に取り組んでいます。

文科省は、「出席扱い」についてや学習評価のガイドラインは、各自治体や学校において策定することを求めているため、どのような活動をどの程度行えば、在籍校で「出席扱い」にできるかの具体的なガイドラインは示されていません。

その中でも、自治体単位で独自にガイドラインを作成している自治体もありますが、決して十分とは言えません。ガイドラインが少ないことが、学校現場や児童生徒の負担を増やしている状況でした。

こうした背景を踏まえ、不登校児童・生徒だけでなく、すべての子どもたちが、ICTを活用した学習をしっかりと評価される未来の教育環境の実現を目指し、今回のガイドラインを提示しました。

まとめ

まだまだ認知が進んでいない「出席扱い」ですが、文科省が制度として通知されており、クラスジャパン学園が提示したようなガイドラインもあります。

ですので、保護者の方も一人で抱え込まず、「文科省の不登校出席扱い制度を利用したい」と学校の担任や校長に一言相談してみてはいかがでしょうか。

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一般社団法人きのこ

一般社団法人きのこ

愛知県の安城市で小中高(20歳まで)のフリースクールを運営しています。主に三河地区のご家庭、お子様向けに「不登校」「引きこもり」「フリースクール」の情報を発信していきます!

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